移住や引越しを慎重に考えすぎると、腰が重くなりがちだ。かといって失敗はしたくないから軽はずみな行動は慎みたい。それが一般的な移住行動パターンですが、竹田家の湘南移住の選択はある日突然訪れたのでした。
「僕の中では、自分自身がそれまでの自分から変わりたくて、家を建てようと思ったのです。たしかに家族には急な話だったと思います」
ご主人の敦さん(44歳)はそう話します。
30歳から熱中しはじめたサーフィンのために千葉のビーチに足繁く通っていた頃、ある日突然「家を建てるぞ!」と、江東区越中島からは逆方向の湘南エリアで土地探しが始まる。
東京の暮らしに不満があったわけではない。奥様の恵子さんの実家にも近いマンション暮らしだったが、下町らしい平穏な生活だったから、家族全員があっけにとられる始末。
子供達は大好きな友達と別れて転校しなければいけないし、奥様だってお仕事の問題がある。
それでも計画はどんどん進んでいった。
ご家族はご夫婦と、現在高校2年生の長女絹菜(キナ)さん、次女の中学3年生優月(ユズキ)さん、3女で中学1年の杜杏夏(モアナ)さん、それにブラック・ラブラドールのHALO(ハロ)3歳。5人と+1の大家族だ。(*現在3歳のHALOはこの時点でまだ不在)
竹田家は子どもの頃からからテレビがないのが習慣だ。それはたくさんの情報に惑わされないで自分で見たもの、感じたものを信じてほしい、家族の会話を大切にして暮らしたい、そんなご主人のポリシーがあったから。
「プラスティックなものや使い捨てるものよりもちょっと高くても長く使えるものを選びたい」ご主人はそう考えて暮らしている。だから家の中には手作りのものがいっぱいある。
家づくりのお金をつくるめるために、東京では車手放して貯金に回したこともあったが、ようやくストーブの薪集めのための大きなトラックも買った。奥様も同様に、もの作りが好きで手づくりのものを心がけている。たとえば週末は茅ヶ崎野球場近くの朝市で地元の野菜を買うことが楽しみの一つだそう。
この家の設計施工を担当したのは、ご自分で自分の家だと思えるように、施主が少しでも家づくりに参加する「セミ・セルフビルド」を推奨している茅ヶ崎の工務店「ホームスィートホームメイド」。竹田さんご家族もしっくい壁の施工でおよそ80%の工程に参加した。
住まいはオフィシャルに表現するなら1LDKだろうか。部屋の仕切りや廊下がない。玄関は土間になっていてキッチンとダイニング、そして小上がりのリビング空間だけ。
2階は家族全員が生活するワンルーム。ここで3姉妹が並んで勉強し、5人が全員一緒に寝る。誰か一人がインフルエンザにかかったら一人用テントで隔離されるとうわけだ。
まるで公民館のようで毎日が合宿、でもそれが楽しい。
茅ヶ崎に移住して感じたこと。
空気が綺麗、建物が低い。星がきれい。
富士山やきれいな夕焼けを毎日見れる。
会話が弾むから街が元気。湘南タイムような時間軸(笑)がある。
なにしろご家族みんなの笑顔がいい。
「自分でいいと思ったことを信じて生きていこう」
竹田家ほど「湘南移住」がこんなに似合うご家族は、めずらしい。
取材・ワイズクリエイティブオフィス
撮影・山本倫子
取材協力・(有)ホームスィートホームメイド(茅ヶ崎市)