”海に行けば開放的な気分に、田舎だけれど便利。私たちには心が豊かになる終の住処です”
Nさんご家族が暮らす藤沢市の高台。
静かな住宅地を通る湘南モノレールは、江ノ島と大船を結ぶ交通手段で、昭和の頃に東京に通勤するビジネスマンのために整備されたという。湘南エリアの中でも湘南らしい緩さがない、偏差値が高いエリアだという人もいる。もちろんジョークだけれど。
ご夫婦は、結婚後すぐにご主人のフランス駐在が決まって渡仏。11年間の大半をパリ郊外のサン・クルー市で暮らした。 一度帰国後、 2010年から2度目のフランス駐在。同じくお子様の学校関係によりパリ郊外で暮らし、トータル16年をフランスで過ごされました。
もともとインテリアに興味が強かった奥様は、ある時知人宅に招かれ、額装されたリトグラフと出会い「これが私が求めていたもの」という直感で取り組まれたのが「フランス額装」でした。すぐにパリのアトリエで基礎・応用コースを習得。フランスでは一般的なホビーのひとつだそうだけれど、当時は作品を仕上げるたびに、殺風景だった壁に額が増え、しばし眺めては満足感を味わっていたほど注力したそう。
帰国後は「トロワピエス」というアトリエを開設して、都内や逗子のアトリエでワークショップや個展を開催、現在はここ藤沢で教室や作品作りに勤しんでいらっしゃいます。
2度目の赴任の前には、環境の良さと通勤に便利だったことから逗子で6年間を過ごしたこともあるご夫妻。ご主人は大阪出身で、海の見える場所で育ち、奥様は横浜の出身だったこともあり、2回目の帰国後には、自宅を建てるため湘南を希望されました。
土地探しの条件は「遠くに海が見えること」。
ご主人がパリにいた頃に排ガスで悩まされたことや花粉症もあって、とにかく天然素材でつくる家がもう一つの条件でした。行き着いたのが「体に良くないものは使わない」にこだわる無添加住宅だったのだそう。
「パリは少し郊外に出ると森がって、鹿やワシやうさぎがいたり蛍が見えたり、そんな大自然が広がっています。そこで暮らしていたことも湘南を選んだことにつながったのかもしれません。」
「屋上からは富士山と相模湾が見渡せます。海も富士山も毎日、時間によって微妙に色が変わります。雨上がりのエメラルドグリーン、富士山もピンクやパープルに見えることもしばしばです」
現在ご主人は大田区への通勤、乗り換えが多いために1時間半ほどかかるそうですが、屋上階のバルコニーから海を眺めてリフレッシュしてから出かけるそう。
「それは、この家で過ごす週末があるから。とにかくここはリフレッシュできます。心が豊かになる。ライフバリューがあるんです。私たちには終の住処です」
自然に囲まれた丘の上に建つN邸は、健康的な自然素材だけではなく、湘南とフランスの香りが素敵に交わる、ポエムのような穏やかな空間です。
取材協力:無添加住宅ライブハウス 取材・ワイズクリエイティブオフィス 撮影・園田咲子 no111bloom