海と山と、子育てと、湘南プチ移住
茅ケ崎市〜みどり、綾乃、陽平さんファミリー
その湘南移住は、不幸にもご主人が亡くなったことから展開したのでした。病気療養中だったご主人が、急逝。山口みどりさんの人生は一転して自分自身を見失うほどの立場に置かれたのでした。
「さあ、これからどうやって生きていこうか」
幸い二人の子供たちはもう、社会に出て自立した生活を確立していましたが、そんな折、失望の底にいた母を見て、二人の姉弟は母に告げたのです。
「もう一度、三人で一緒に暮らそう」
ある日、姉の綾乃さんが母を元気づけるために、ハワイ旅行に誘った。それまで暮らしていた綾瀬市には海がありません。大した縁もなかったけれど、ハワイ旅行で海が心におよぼすヒーリングを体で感じてきたみどりさん。海って素晴らしい! そのころサーフィンに虜になっていた長男の陽平さんは、藤沢市辻堂で物件探しを始めていました。
「小さくてもいい、私たちの実家を作ろう」
親子三人が集まって、湘南の家探しが始まった。縁あって茅ヶ崎市東海岸、海まで歩いてすぐの土地に今の住まいを作ることができたのです。
長男陽平さんはヨガのインストラクターの会社員でサーファー、姉の綾乃さんもヨガのフリーインストラクターということもあって、自宅に念願のヨーガスタジオを併設することに。二階のリビングはクラス開催の時にはスタジオに解放されます。
「茅ヶ崎に半年住んでも、まだ海に行く気分にもなれませんでした。でもある日夜の海にぽっかり月が浮かんでいて、さざ波の音が聞こえて、心から癒された瞬間がありました」
ゆっくりと確実に、固く傷ついたみどりさんの心は茅ヶ崎の海に癒されていったのだと語る。今では性格も180度変わって、ウクレレを弾き、歌い、フラにも熱中するバリバリの茅ヶ崎人。
小麦色の笑顔が眩しい。姉の綾乃さんは、「母って、こんなに笑う人だったのかしら」と思うこともあるそう。
仲の良い家族。山口家の場合は、ホームドラマのような軽々しいものではなかったけれど、多難を乗り越えてきた家族だからこそ強い絆が再生された。それを演出してくれたのは、紛れもなく茅ヶ崎の海と町、そして温かいローカルの人びとのおおらかさだったそう。
「茅ヶ崎のすべてに癒されてきたから、お返しをしたい。ずっとここに住めることを感謝して」
教えて! 海そば移住の○と????♂️
Q:湘南に移住してよかったこと
お店のかたが優しい。外から来た人を受け入れてくれる。
Q:移住をしてビックリしたこと
波がいいと店が休みになる。平日に海にいる人が多い。ビーチサンダルとムートンブーツがあれば暮らせる。
Q:移住してから困っていること
JRの料金が高い。東京まで約1000円
Q:これから移住を考えているかたに一言
思いついたら実行、住んでみてからわかることもたくさん。賃貸でもいいから住んでみましょう。
撮影*山本倫子