選択肢に溢れる自宅の設計。情報と選択肢が溢れる中、何を重視し、何を捨てるか・・・迷った時は建築家の自邸から学びを。建築家にとって自邸は、自身の思想を色濃く反映させることができるチャンスであり、時には代表作として建築史上に残る名作にもなる。お家づくりのプロである建築家は、自邸に何を求めたのか。間取りや設備の既成概念など捨て去って、唯一無二の自邸づくりに続け!
1「全体を見渡すパノラマよりも、正しく枠取られた風景のほうが美しい」


客をほぼ招かなかった自邸が世界遺産に。ルイス・バラガン邸
バラガン本人は、孤独を好む所謂「嫌な人」だったらしく、この美しき自邸に友人を招くことはかなり稀だったとのこと。その人となりを語るエピソードのほとんどが、当時邸宅で働いていたメイドさんによるものなのが面白い。ただひたすらに自分のためだけにつくった空間が、その後世界遺産となり、多くの人の目に晒される(申し込めば誰もが見られる見学ツアーもある)ことを、お空の上でどう感じているのか?
「盲目的に窓を大きくすることより、どこを切り取るかを熟考してフレーミングするほうが美しい」、という教えは、豊かな眺望を取り込みたい湘南の家にも響く名言。
2「内外を曖昧にすることで、人は自然の一部という感覚を蘇らせる」

森の中で暮らしているような錯覚に。西口 賢邸「大地の家」
石切場に放置されていた石を組み合わせて大地を再現し、自然の樹形のままのケヤキ、ノコギリ痕が残る米松など、あたかも森の中にいるような生命観溢れるアイテムに囲まれて暮らす、まるでジブリの世界!(しかもそれが室内の話)中と外の境目を見逃してしまいそうなミニマルな納まり、その施工過程も、現場にある素材で試行錯誤しながら「職人のエネルギー」に身を委ねたという。
森で居場所を探しながら生息する原始の生物になったよう!固定観念に囚われず、自分が必要とする自然との関りを、一度常識を取っ払って考えてみては。
3『徒然草』に学ぶ。「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」


二重建具の開閉で風と光が抜け、夏でもエアコンに頼らない家。津田 茂邸「風棲家」
『徒然草』にあるように、高温多湿の日本では、住宅は夏を上手く乗り切れるように考えられてきた。風棲家は、開口部を大きくし、ガラス戸と格子戸の中間領域を設けることで、風と光を緻密にコントロールし室内環境を整える。昨今の「高気密」「高断熱」の逆を行く、自然エネルギーを極力取り入れる家。坂道の途中にある三角形の土地は3方向が道に面するので、光や風が通り抜ける。
東南側の格子戸と落葉樹は、夏に心地よい木陰をつくり、冬はガラス戸のみを締め、日差しを室内に。緑しか見えないテラスに座れば、そこはまるで南国リゾート!光と風が溢れる清々しい家は、自然豊かな湘南の家でも実現できそう。C 小川重雄
小川友紀プロフィール
1980 年生まれ。アトリエ系設計事務所 に勤務ののち、モヤデザイン一級建築士 事務所を設立。住宅や店舗などの設計を手掛ける。2024 年からは鎌倉COCO- HOUSE に参画し物件探しの段階から設 計目線でアドバイスしつつ、不動産業の見習い中。ピラティスを続けていたら人生最高を記録し現在身長168cm。夫と子供 の3人暮らし。実家は信州戸隠、海と山を行き来する生活が今はちょうどいい。






