インタビュー❸
工場直営の無垢材家具ショップ『KAGURA家具蔵(カグラ)』
代表取締役 相田敬介さん
取材・文◎藤原靖久
ポートレート撮影◎山本倫子
取材協力◎株式会社カグラ
”上質なものは上質な時間を過ごす空間を作り、
人の寿命の何倍も輝きを放ち続けると思います。”
*以下敬称略
*❷から続く
「無垢の家具は使い込めば使い込むほど味わいが出てくるもの。使い込んだキズや経年変化した色が味わい深いものになり、家族のいい思い出になっていく。そんな家宝になるようなものを作っていきたいと思っています。人の手で作ったものを人の手で育てていく。捨てられないもの、捨てたくなくなるものを生み出していきたいと思います。
ものを大事にしていくことは、人を大事にすることなのだと思います。なぜなら、この家具を使っていただくことは職人たちがものづくりという仕事を通して、挑戦することができる可能性を持っているのです。先ほどお話した直営店を増やした理由は、結果、職人たちを育成する場を増やしていったということなのです。こうして先人の技術を継承してもらい、なおかつ発展させていくことになるのです」
相田の、家具蔵におけるポリシーは、手先の器用な日本人の文化を継承していくことにつながっている。
「鉄やプラスティック製品は機械で全部完成できるけど、自然の素材に向き合ってものをつくるのは人間でなければできない。五感で人の温もりを感じられるものを生活環境の中に取り入れることは、今のニッポンにもっと必要ではないかと思っています。とくに先人は木を生活の道具として利用してきましたけれど、家具は生活の道具ですから、木を使うことは日本人としてはじつにあたりまえのことではないかと思います。やっぱり日本人には木が一番だねえ、そんな世の中になるといいですね」
* 夢
「日本は素晴らしい文化を持ちながら、あまりにも多くの他国の文化を取り入れたがために、残すべき良きものが減っている気がします。空洞化した食の自給率のように木を使うことの減少は、すなわち製造の減少でもあるのです。製造拠点が他国に行き、失われつつあります。ですから私たちも自分たちが作った家具は後世にずっと残っていくものだから、そうした思いを持ってものづくりをしていこうと話しています」
家具蔵が国内の木だけでなく、特性が全く異なる北米やアフリカの原木を取り入れていることは、
これもまた職人たちの技術の向上につながっていることも事実である。
「木の家具の中でもチェアは、人と接する時間の多いものです。世界万人に共通しているものなのです。世界中の人に座り心地から、デザイン、多くの人から評価を得られるものです。使いやすく軽くて丈夫、美しい後ろ姿、座り心地、といった価値観を持っており、だからこそつくり手の力量が試され、力が入りやりがいがある。そこにさらに発展できる価値があると思います。日本の木を世界に紹介して知ってもらうことも大事ですが、世界中の木を扱えるニッポンの技術にも素晴らしい未来があると思います」
自分たちがつくってから何十年も使われたアンティーク家具を世界へ輸出する、そんなことも夢ではないのだ。
終わり
*3回連続インタビューは本誌『ホームアンドデコール+バイザシー』
2017年VOL.5から全文抜粋したものです。