逗子海岸の端、渚橋あたりに10 棟にみたない集落がある。およそ10年ほど前に切り開かれた小高い丘に時を経て経年美を醸し出し始めた注文住宅が連なる。ゆるやかなS字カーブをなぞるようにたたずむ家々はまるで別世界。海のそばで経年の変化を受け、家々は若かった木々とともに成長を遂げていた。街並みの成熟はむしろ進化の証明だろう。
横浜市の南部、金沢区にお住まいだった頃から食事やドライブで逗子方面に向かうことも多かったIさんご家族には土地勘があった。この集落の中でも大きい二世帯住宅となっている。家族が横浜からこの地に移住を決定づけたも
うひとつの理由が逗子の空気感。「(物件は)100軒以上を見ました。両親と
の住まいや主人の通勤などを考慮すると、交通の便がよく平坦な土地ということでここに。海がそばにあるということはとても気持ちいいですね。海へは毎日犬の散歩でいきます。塩害もそれほどでもなかったですね」
それから「逗子はなんといっても(住む人)人間がいい、穏やかな街です」とも。家づくりは大手ハウスメーカーではなく、地元のビルダーであること、それはIさんご夫婦の強いこだわりだった。そんな時に出会ったのがキリガヤスタイル。東逗子にあるモデルハウスを見るや「このままの家がいい」となったほどの惚れ込みよう。設計に造詣があるご主人さえ、まったく口を出さなかったほど、頼り切っていたという。かくしてこの集落の第1号となった。それから寒い冬と暑い夏を繰り返すこと10余年。この家は時間と引き替えにたっぷりと「経年の美」を授かることになる。
こうしてたどってみると、Iさんご家族は、ずっと以前からここ逗子にすむことが運命づけられていたのも知れない。