玄関だけ共有し、水まわりも親子世帯と別々で、1階を親世帯ふたり、2階と3階(小リビングとバルコニー)を子世帯3人が暮らしている。南に小山を背負い、たっぷりと緑に囲まれた葉山の自然にすっぽりとおさまる住まいは、やはり木や自然素材をふんだんに採用した、落ち着いたものがふさわしいと思います。
無垢の木の床は、寝転がってもやわらかく、木のかぐわしい香りもやさしく赤ちゃんを育んでくれる。生まれたての小さな頃から木の家で暮らすことは、身体にも心にも安定を維持してくれるのだ、という仮説はおそらく正しいと思う。
1階の親世帯は、真ん中にウッドデッキを挟んでリビングと和室に振り分けられる。このデッキから小山を眺める借景は、昼も夜も一年中無料で楽しめる贅沢な空間だ。
さて、2階リビングは、太陽光が南の小山から差し込み冬は温かく、夏に涼しくなるようにハイサイド窓の位置を最適になるよう考慮している。さらにリビングから長いデスクのある3階のセカンドリビングへ。バルコニーに通じる余裕のあるスペースも趣味や仕事に集中できる落ち着いた空間だ。
1階から3階までそれぞれの部屋が明確な目的をもっているにもかかわらず、A邸は家のどこにいても一定のやわらかい空気感を感じることができるのは、「木」の効果かもしれない。「木」を見て、触れて、香る住まいは二世帯住宅というあたかも分離された世界を感じることがない。
ご家族みんなが気に入っていると話す「木とともにある暮らし」。それは伝統的なニッポンの正しい暮らし方かもしれない。
BUILDER’S NOTE
1階がご両親様エリア、2、3階が子世帯エリアの3階建て二世帯住宅です。1階の奥まで明るさを取り入れるため、建物をコの字型に配置しました。南面に広がった山からの風、光を取り入れるための最良の窓の配置を考えました。1、2階とも南面に広がった山の大自然を見渡せるリビングは親子世帯ともに気持ちよく過ごしていらっしゃいます。3階のセカンドリビングは静かな空間で、ルーフバルコニーの床は金属を使用しているためバーベキューなどに火気を使用しても大丈夫です。
INFORMATION
神奈川県三浦郡葉山町A邸
敷地面積/139㎡(42.04坪)
延床面積/162.71㎡(49.21坪)
1階/67.07㎡(20.28坪)
2階/70.80㎡ (21.41坪)
3階/24.84㎡ (7.51坪)
用途地域/第一種住居専用地域
構造/木造3階建て
間取り/1階2LDK / 2階3階2LDK (二世帯住宅)
設計・施工/株式会社キリガヤ
家族構成/親世帯2人 子世帯3人
MATERIAL
外部仕上げ
屋根/コロニアル
外壁/リシン吹き付け仕上げ
内部仕上げ
床材/レッドパイン自然塗料仕上げ
壁/エッグウォール
天井/エッグウォール
(取材:2016年)