海や山に囲まれた海辺の町では、その生活は自然環境とはうまく折り合いをつけて共存していくことが必須だ。絵に描いたような爽やかな晴れた日ばかりではない。塩害や台風などの災害、時には地震国としての自覚と覚悟も必要。ましてや代々の土地で世代を繋いでいくとなると、家は自然災害に強く、安心安全であることが第一。今号では逗子市で災害に強く自然素材をふんだんに使って家の建替えを行ったご家族を訪ねました。
“家族のためにも、家はまず安全安心であるべきだと思うんです”
「今日は今シーズン最後かな」と父である吉原さんが呟く。
晴れ渡った2月、冬空の朝、薪ストーブに火がはいった。いい写真が撮れるようにと、手慣れた作業で薪を投入して火を按配してくれる。
吉原さんはここ逗子の小坪で生まれ育った生粋のローカルだ。
子供達はもうそれぞれ独立した生活があり、生まれ育った家も夫婦二人だけでは大きすぎると感じていた。
長女千尋さんは結婚して川崎で暮らしていたが、親世帯からの相談で、生まれ育った土地で二世帯が住める家の建替えを決断。ご主人である本間さんが施主となった。建替えが終わったのは2020年11月、まさにコロナ感染拡大の最中のことだ。
家を建替えようという計画を聞いて
「むかし住んでいた家の良さの記憶があって、やっぱり木の家がいいなあと感じていました」と千尋さん。
家族全員で横浜の住宅展示場で体験した無添加住宅の自然素材の家づくり。長年湘南の海のそばで暮らしてきたからこそわかる感覚、自然素材で肌感覚で暮らせる家を理想としていた。
千尋さんのご主人である施主の本間さんも、無添加住宅の木や自然素材の性能はもちろんのことだが、「天然石コーラルストーンのナチュラル感に一目惚れだった」と話す。そんなエピソードもあって設計施工は無添加住宅ライブハウスに依頼することに。
ここ数年、地球温暖化の影響で日本も大きな自然災害に見舞われることが多くなった。台風は凶暴化し、地震もまったく油断ができない。
50年以上この地で暮らした父、吉原さんが話す。
「まず家は安全安心であるべきだと思います。これからは自然災害も多くなるだろうし、家が凶器になってはいけないと思います。化学物質もいけない。そして用途に合わせて自分たちで手を加えていけることも大切じゃないかな」
いつか新たにお子様が生まれてくれば3世代、それ以上に「家が家族を安全に守ること」はなによりも欠かせない条件だ。
父が生まれ育った小坪の町をこよなく愛し、たくさんの地元の仲間がやってくるこの家には、玄関を開けた途端、薪ストーブが置かれた団欒の間がある。ここに一人ふたりと町の衆が集まり会合が持たれるというわけだ。
基本的に1階は若夫婦のフロアで、2階がご両親のフロア、家族全員が食事を共にするダイニングは2階にある。家族の一員である猫ちゃんにはどのフロアも自由に横断できる特権がある。
取材当日は、根っから明るいお母様と次女の風花さん、家族全員が参加できた。
本間邸の威風堂々たる大屋根を見上げてみると、「二つの家族を守っていくぞ」と皆を抱擁しているかのように思えた。
BUILDERS NOTE
本間様、吉原様の二世帯、猫ちゃん同居のロフト付き2階建てのプランをご提案させていただきました。親世帯である吉原様がお祭りが大好きで大勢で歓談ができるスペースを取りたいということで、玄関に薪ストーブを置き、それを取り囲むように人々が寛げる空間をつくりました。
そして2階には両世帯の共有部分を設けることで団欒の場をつくり、そこからキャットタワー、キャットウォークで猫ちゃんも自由に行き来できる皆様のフリースペースをつくりました。お一人おひとりがこういうふうな家に住みたいという思いがいっぱい詰まった住まいができたと思っています。末長く共に幸せな生活をお送りください。
玄関ドアを開けば、いきなり薪ストーブの土間がある。ここに家族が揃い、近所の人たちも集う。この家の中心でありリビングでもある
DATA
- 神奈川県逗子市H邸
- 敷地面積/225.78㎡(68.29坪)
- 延床面積/194.17㎡(58.73坪)
- 1階/83.22㎡
- 2階/88.60㎡
- ロフト/22.35㎡
- 構造/木造2階建て+ロフト
- 設計・施工/無添加住宅 株式会社ライブハウス
- 家族構成/本間邸2人猫1匹、吉原邸3人猫1匹
- ◎外部仕上げ
- 屋根/クールーフマルチカラー
- 外壁/無添加オリジナル漆喰
- ◎内部仕上げ
- 床材/無添加オリジナルアカシア柿渋塗装品
- 壁・天井/無添加オリジナル漆喰
その他/コーラルストーン(天然石)
<取材協力>
無添加住宅 株式会社ライブハウス