逗子の住宅街の敷地に「木」の平屋の家。それは単にそこに置かれた建物ではなく、丹精込めた庭で囲まれた、調和のとれた「住まい」。日本人が作り上げてきた「暮らし」の原点のようにたたずんでいます。
四季のある日本であっても、それぞれの季節を深く堪能できる「住まい」というのはなかなか難題である。しかし、季節の変化をしっかりと感じられる、恵まれた自然環境がある逗子の街では、大都会にはない「自然にとけ込む」住宅がもっともふさわしい。
逗子の緑豊かな環境を背景にしたY邸は、平屋である。
そして建物と庭のふたつの調和が、見事なファサードを表して歩く人々の視線を集める。
住まいは建物としての「家」と「庭」があって「暮らし」をつくりだす無形の存在だ。まるで「料理と器」があって「食事」がつくられる、そんな関係かもしれない。
逗子の町に長く住み続けているYさん。ここで畑や庭仕事の合間にひと休みするための小屋のようなものを想定していたが、いつのまにか堂々たる平屋が完成した。(株)キリガヤの担当者と打ち合わせを重ねるたびに夢は広がっていったという。手入れの行き届いた庭を拝見すると、すっかり想定していた以上に楽しんで利用されているご様子。
薪ストーブのあるリビングの椅子に腰掛けて読書を楽しむ。静かな空間にささやく鳥の声、吹き抜ける風。天井の高い、広々としたリビング&ダイニングから丁寧に手入れされた庭をながめる。Yさんにとってほっとする時間、安らぐ空間となっている。
都会にはスピード感のある暮らしがあり、海辺には華やでにぎやかな生活もある。海と山の両方の環境に恵まれた逗子、ここではやはり「土(庭)」のある「木」の家に勝るものはない。「木」を中心とした家づくりが日本のすべての住宅をかたちづくるものではないが、走りすぎた今の時代に振りかえってみれば、「木の家」はじつに日本人のこころに安らぎを与えてくれるものだ。
BUILDER’S NOTE
このお宅の魅力はなんと言っても、庭や畑と共に生活があるがゆえ、木々や作物の様子を常に見ることができ、昼間日差しが強ければ、畑仕事は一休み、雨が降れば本を読んで過ごす「晴耕雨読」の理想的な暮らし。この空間には豊かな時間が流れています。そんな素敵な暮らしの実現をお手伝いができたことは、私たちにもこの上ない喜びです。秋の収穫が楽しみですね。