湘南の中でも海と山とが共存する街といえば逗子があります。その海沿いの小高い丘の上に建つM邸は、静かな住宅街にふさわしいコンパクトでとても謙虚な佇まい。
整然と家の基本的なかたちを維持しながら、どこか施主の暮らしかたにセンスの良さが伺えるファサードです。
手入れ良く育てられたアプローチの植栽、白いモルタルと木のコンビネーションの外観。すでに3年の年月が経過したとは思えないほど初夏の空によく映えています。
「木の家が良くて、地元逗子の工務店ならキリガヤさんだと思い、お願いしました」とM様。
「小さくても雰囲気のある家。凸凹(デコボコ)がない三角屋根のお家」がご希望だったそうです。
室内にアプローチしていくと、居室を2階に集中したことでいつも家族の気配を感じることができるように、1階はリビング・ダイニング、水回りがまとめられています。
「家具ははじめからつくり付けにしていただき、持ち込んだものは椅子とテーブルくらい。“この場所にはこれを入れる”と決めて、使ったらかならず戻す。すぐに新しくなったり壊れたりする機械類もあまり必要としません」と話します。だから室内はいつも整っている。
「シンプルに暮らしたい」
そんなライフスタイルがすっきりとした可愛い空間を作り出しているのでしょう。
2階のふたつの居室は決して大きくはないけれど、高さを抑えた三角の勾配天井が穏やかな空間に包まれたような不思議な心地よさがあります。
家づくりとなると多くのユーザーは“あれもしたい、これもしたい”と夢がどんどん広がっていきます。それはとても自然な動機で、夢と現実の狭間で折り合いをつけながらプランが進行していくもの。ですが、夢を詰めこみすぎない家づくりが、こんなに心地よいものだと気づきます。
「逗子は鎌倉や葉山ほど観光地ではなくて、私にとっては生活に便利な街、戻ってきたい場所、(暮らしに)ちょうどいい街です」と生まれ育った逗子愛をしっかりとお持ちです。
「これがいい」ではなく「これでいい」という“小さくもていねいな暮らしかた”それが逗子の街がよく似合う、センスのいい暮らしかたかもしれません。
BUILDER’S NOTE
小高い丘の住宅街に、白を基調にした三角屋根の可愛らしい家。お施主様の大きな要望は、三角の屋根と収納を充実させることの2点だったと思います。
お引渡しから数年が経ち、屋根の大きくかかったバルコニーも印象的になり、造作家具も生活によく馴染んでいる暮らしぶりを拝見して、お家と住まい手がとても上手に暮らされていらっしゃいました。
INFORMATION
神奈川県逗子市 M邸
■敷地面積/82.44㎡(24.93坪)
延床面積/80.42㎡(24.32坪)
1階/39.47㎡(11.93坪)
2階/40.95㎡ (12.38坪)
構造/木造2階建て
間取り/2LDK
設計・施工/株式会社キリガヤ
家族構成/2人
■MATERIAL
◎ 外部仕上げ
屋根/スレート葺き
外壁/リシン吹付
軒天/ウェスタンレッドシダー
◎内部仕上げ
床 材/ 1F・2F:オーク材15㎜
壁・ 天井/ エッグウォールパルプ