ウイズコロナは東京中心の社会から、ITを活用して地方でゆっくり暮らすことも簡単になったスマート社会へ。
都会の厳しい環境で競争社会を生き抜き、大きな成功を得る人たち。海と山に囲まれた自然豊かな環境で自由におおらかに生きていくことを選択する人。あるいは都会と地方とのデュアルライフを楽しむ人。人生には色々な選択肢が生まれています。
今回は「子育て」がきっかけとなり葉山町に移住したKさんご家族のエピソードをご紹介しましょう。
神奈川県葉山町 K邸
取材・藤原靖久 撮影・山本倫子 取材協力・(株)バウムスタンフ(藤沢市)
東京・文京区でマンション暮らしだったKさんご家族。緑地も多く、文豪も住んだ閑静な住宅街が広がる文教モデルですが、とはいっても都心の真ん中。「子どもたちが月を見るのが好きで、ビルやマンションが乱立する景色よりも空が広いところがいいなと。便利さよりものんびり四季を楽しみながら自然と近い環境で子どもたちを育てたいと思うようになったのです」と話す奥さま。
都内でも有数の進学校があるこのエリアでは、早期教育も盛んであったが、「子ども時代は自然に沢山触れて創造力豊かに感性を磨いてほしい。とにかく沢山遊んで、いざ勉強という時にとことん力を注げるような人間になってほしい」との思いから「移住」を考えはじめた。
ご主人は都内の企業に勤める会社員。おふたりが以前から共通してお好きだった街は自然あふれる軽井沢で、年に何度も通い、真剣に移住も考えたこともあった。幸いご主人はどんなに通勤距離が遠くても苦にならない、ゆったりとした性格の持ち主だそうで、実際に軽井沢で土地探しをはじめるまで移住に近づいていたのでした。
しかし、現実を考えたときに雪国の暮らしに少し不安も。
「軽井沢のような自然あふれる場所と考えたときに、ふと葉山が浮かび、土地を見にいったら富士山が見えて、その穏やかな空気感にも魅了され移住を決めました」
家づくりには相当な熱意と具体的なアイデアもたくさんお持ちだったから設計先も色々と検討されたようですが、海辺の暮らしを知り尽くした地元工務店にお願いしたいとなり、雑誌(なんと小誌の姉妹紙HOME&DÉCOR)で見つけた木の家を得意としたバウムスタンフに依頼することに。
葉山に越してきてから、こどもたちは保育園や幼稚園に通わず「自主保育」という希望保護者が協力して当番で面倒を見守る保育形式に参加しています。山や海が接近している自然豊かな葉山町では、この育て方は自然環境を最大限に活用できるのですね。
「マンション暮らしでは部屋を走り回る子供達の足音が気がかりでしたが、ここなら力一杯遊べるからのびのびと育ってほしい。東京での暮らしがあったからこそ、いま葉山の豊かさと価値観に気づけたのかもしれません」
2020年5月、コロナ禍の真只中に引っ越しをしてから、テレワークが多くなったと話すご主人。「テレワークが増えたらから引越したわけじゃないんですけどね」と笑う。件のように長い通勤時間も苦にならなかったけれど、今では週末がまちどおしく、釣りやマラソン、SUPなど楽しみたいことがいっぱいで時間が足りないらしい。
「葉山の生活を一番楽しんでいるのは主人かもしれません。でもそれがとても嬉しい。海に沈む夕焼け、富士山、波の音、月、家の窓から見える景色…大好きなものをあげればきりがないのですが、自然の豊かさを身近に感じながらの暮らしにとても満足しています。子供と海にいけば何時間でも遊んでいられるし、裏山を歩けば眼下に青い海が見えて、この地ならではの恵まれた環境に本当に感謝しています」
この移住が成功だったことは、写真のように子どもたちのあふれんばかりの笑顔がその証。比較的年齢層が高かった逗子葉山周辺では、近年Kさんのような若いご家族が増加して、街が活気づいているような気がします。
移住を決め、土地を探し、家づくりとなると多くの人たちにドラマの幕が開く。その過程にはたくさんの紆余曲折があり、細い糸が不思議なトラックを描いて繋がっていく、映画のようなエピソードの数々。振り返ってみれば、家づくりにはそんなドラマがあるからこそ愛着が湧くのでしょう。
移住とは「人生という長い旅の中で、新しい列車に乗り換えるプラットフォーム」なのかもしれないですね。
BUILDER’S NOTE【バウムスタンフ】
葉山の自然に囲まれた静かな場所に建つK邸。設計する時に、とくに気を使ったのが明るく開放的なことと、この眺望を生かすことでした。居間と食堂は、南側の太陽が降り注ぐ景色と、北側の山並みに日が当たる景色の両方を楽しむことができます。晴れた日には、ルーフバルコニーにあがれば海と富士山をのぞめます。
設備や使い勝手などは奥様がはっきりとしたイメージや細かなディティールを持っていらっしゃったので、それをプランに落とし込んでいく作業は設計者としもとても楽しかったです。まわりの環境とともに家を楽しんでいただいているようで嬉しく思います。
住宅データ
■敷地面積/169.26㎡(51.20坪)
延床面積/ 112.18㎡(33.93坪)
1階/59.20㎡(17.90坪)
2階/ 48.02㎡ (14.52坪)
塔屋/ 4.96㎡ (1.50坪)
構造/木造ツーバイフォー2階建
間取り/3LDK
設計・施工/株式会社バウムスタンフ
家族構成/4人(大人2人・子ども2人)
■MATERIAL
◎ 外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板 平葺き
外壁/米杉ベベルサイディング
その他/ポーチ軒天/防火サイディング
◎内部仕上げ
床材/1F・2F:オークラスティックグレード15㎜
壁/ドライウォール 天井/ビニールクロス
LDK天井/ウエスタンレッドシダー
株式会社 バウムスタンフ
〒251-0047 神奈川県藤沢市辻堂5丁目4−11 番 C 号
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