全国民のポストにマスクが配られ目に見えないウイルスに怯えた日々。テレワークのもと会社に行かなくなった多くの都会人がブームにのって湘南に移住を決めた。もう昔ばなしのようだけど、湘南移住はまだまだ止まらない様子。
一息ついたこの瞬間に移り住むのは人生プランを冷静にリセットした移住者たちかもしれない。好きな場所に好きな家を建てて日常の変化を楽しむ。彼らの「ハレとケの往来」はつづく。
S様は昨年2023年12月に東京・三軒茶屋から引越しされた移住ご家族。
当初は都内で新築戸建てを考えていたが、都内の不動産価格の高騰は予想以上に急激なものだった。ニュースでは都内の新築マンションの平均価格が1億円を超えたと叫んでいる。
世田谷で8年間を賃貸住宅で過ごしたご夫妻。ご主人はフランス生まれのソフトウェアエンジニアだから居住地に制限はない。コロナパンデミックもおさまったころから家づくりをスタートすることに。
東京の不動産価格の高騰の折、ちょっとユニークな不動産会社フリーリーデザインボックスから「それならずっと憧れていた海の近くでの暮らしを検討してみましょう」と背中を押されたが、東京まで結構時間かかることで気持ちに踏ん切りがつかなかった。「予算を考えたら海の近くでの家づくりの方がやりたいことが叶えられるのでは?」と現実的なアドバイスを受け、葉山以外も湘南エリアの様々な土地を案内された末にこの土地に巡り会えたと話す。
住みたい家を最初に見積もって、総予算から除いた金額で土地を探すという「住みたい家から考える逆転の発想」だった。
建物は自由設計を選択し東京の設計事務所に依頼した。第一印象は「白い家」。外階段を備えたファサードはナチュラルなオフホワイトのモルタルと無垢材とのコンビネーションで周囲と比較してもいきいきとした呼吸が伝わってくるようだ。
1階はゆったりとしたシューズクロークを備えたエントランスと家族それぞれの居室。白いドライウォールと薄白塗装の床材が「白い家」を印象付ける。2階はリビングとダイニングスペースがほぼ占領するが、スキップフロアでご主人のワークスペースを確保している。天井にも白いシナベニアを採用。3階へ柔らかにアールを描いた白い鉄階段が強いアクセントになっている。
「家事動線に徹底的こだわった」と話すように、キッチンに立つ奥様の目線は小さなお子様と3階のご主人まで広範囲でキャッチできると笑う。リビングの向こうは奥行き2メートルほどの広く大きなバルコニーがセカンドリビングの役割を果たしている。この空間が欲しかったとご主人。
葉山町の高台の住宅地は緑に囲まれ、海にも近く自然がいっぱいだ。日本でも多くの外国人が住んでいらっしゃるが、生来自然環境豊かな国で育った人も多いためか海や山の環境を好む傾向があると思う。鎌倉や葉山は住みやすい場所なんだろう。S様ご家族も森戸海岸でヨットを楽しんだり、葉山の山を散策したり早くもナチュラルな暮らしに馴染んでいるようだ。
コロナも終息した今、湘南移住もスピードはやや落ち着いて高止まりしている。好きな場所で好きな家を建てて暮らす。都会生活をリセットして葉山の「ハレとケ」の日々を楽しんでいる。
・INFORMATION
敷地面積/163.77㎡(49.54 坪)
・建築面積/71.56㎡(21.64坪)
・延床面積/120.07㎡(36.32坪)
1階/55.48㎡
2階/52.17㎡
3階/12.42㎡
・構造/木造3階建て4LDK
設計/株式会社アトリエハレトケ 長崎辰哉
施工/株式会社バウムスタンフ
・家族構成/4人(こども2人)
MATERIAL
・屋根/エスジーエル鋼板 縦ハゼ葺き
外壁/窯業系サイディング/ジョリーコート仕上/米杉木製パネリング
・床材/合成樹脂系床材、複合フローリング、長尺ビニール床シート
壁/ドライウォール