施主のK様は少年時代を同じ神奈川県内の海のそばで過ごした。家のすぐ前が海という環境だったそうで、今でも海の思い出は強く心に残っていると話します。
奥様も以前はマリンスポーツを楽しんでいたこともあり、子供さんが生まれてから家を持とうとするとき、海辺の街の暮らしをすんなりと受け入れることができた。
地理的に藤沢市は湘南のど真ん中に位置し、中でも鵠沼海岸は海辺の街の代表格とされています。
海岸から陸側向かって南北に静かな住宅街が連なる。かつては1区画300坪のお屋敷が立ち並んだこの鵠沼・松ヶ岡は、いまでは小さく分割されてはいるものの、象徴的な黒松と石垣はまだ随所にその名残をとどめています。
筆者は海のそばで暮らすために住宅にふさわしい材料とはなんだろうと尋ねられたら、迷いなく「木の家がいい」と話すだろう。
強烈な太陽の光、海の潮を運んでくる南風、1年に何回かやって来る台風、と想像を超える自然の力を目の当たりにすることは間違いないからだ。
「質実剛健な家にしたい、そのためには木の家でした」と話す施主。
自然の力には自然の材料で抗うということなのだろうか。
ふたりの小さなお子さまは、少し硬めのカバザクラを採用した床でゴロゴロと遊んでいる。リビングはかけっこができるほど広くおよそ27畳もあるそうだ。家のどこにいても木の香りが漂うほど。白い壁とのコンビネーションが目に優しく、ご家族の心の落ち着きを招いているのだろう。
海辺の街には木の家が本当によく似合う。
ゆったりとした敷地に植え込まれた花木が季節ごとの主役となって窓外に色彩豊かな景色をつくり出してくれる。
鵠沼海岸独特の風景だ。
湘南の真ん中では、家づくりも正統派なのである。
BUILDER’S NOTE
K様のご要望は子供たちが走り廻れる広いリビンングでした。吹抜やデスクスペース、子供用の出窓付図書スペースなどを設け表情豊かな空間としました。敷地は住宅街ではあるが車や人の通りも多いため、中・高木樹木をバランスよく植えることで庭と通りとを緩やかに繋ぐ計画としました。通りの人からも『素敵な植栽ですね』とよく声を掛けられるとのことで、うまく街並みに馴染んだようで安心しています。
INFORMATION
■敷地面積/162.96㎡(49.29坪)
延床面積/124.21㎡(37.63坪)(外部空間含む)
1階/65.83㎡(19.91坪)
2階/58.38㎡(17.65坪)
構造/木造2階建て(在来軸組SE構法)
間取り/3LDK
設計・施工/株式会社キリガヤ
■MATERIAL
◎ 外部仕上げ
屋根/ジンカリウム鋼板 砂付
外壁/リシン吹付
◎内部仕上げ
床材/サクラ(西南カバ)
壁/エッグパルプ
天井/エッグパルプ・一部羽目板