海そばの暮らしは夢のような生活だけど、現実的には「仕事」や「住まい」「通勤」などの不安がありますよね。でも最近では、働き盛り世代のリモートワークやフレックス勤務形態などの働き方の変化によって、海そば暮らしを実現できる環境は整ってきました。もちろん経済的基盤はしっかりとしながら、現実に都会を離れて湘南、横浜、そして千葉外房エリアに移住するニューファミリーが激増しています。そこには仕事と家族を両立できる、ちょっとした合理的な工夫があるんです。
鎌倉市Yさん 取材:藤原靖久 撮影:ワイズオフィス
「ここから海とテレビが見えるようにと、テーブルの位置を考えてお願いしました」
都内の大手代理店に勤務するYさんは、5年間の海外勤務を終えてから、サーフィンを趣味にしていることもあって帰国後は湘南に住むことを決めた。近年では幸運にも企業の「働き方改革」も功を奏して鎌倉からの勤務形態を楽しんでいるかのよう。
鎌倉の海の見える高台の奥座敷、そう海の見える高台にY邸はある。まだ多少未完成だという外観は薄いベージュの外壁と木のコンビネーションが美しい。室内は、白い壁と黒いモルタル、濃い木の色の3色がメインカラーとなっている。
「自分の注文住宅を作ることの難しさも感じました」ともおっしゃるけれど、それほどご自身の入念なイメージを注ぎ込んだともいえるこの住まい。1階のドアを開くと大きなモルタルの土間が半分以上の面積を占めている。それは海外赴任前から一緒に暮らしてきた2頭のバーニーズドッグ「セナ」と「アル」のため。大型犬にとっては夏も冬も過ごしやすくて歩きやすいスペースだから。
小上がりのスペースに件の海が見えるテーブルとキッチンがレイアウトされている。
2階はご自身の寝室と富士山が望める居室がもう一つ。南に大きな吹き抜けを設けたことで寝室の小窓から海も見える。度重なる打ち合わせは、こうした細部にまでこだわったアイデアに帰結しているのだろう。
「会社や周りのかたがたはこんな海そばの生活をどうみているのでしょうか」とちょっと意地悪な質問をしてみた。
「通勤が大変だろうねえ、とかいろいろなマイナスな意見もあるのでしょうが、実は羨ましいのでしょう。ここで仕事のプランも考えるし、家で過ごす時間はとても大切だと思います」とほくそ笑むのでした。
東京で働くビジネスマンにとって通勤は移住の難関。だけど不安や心配ばかりを抱えていては、「人生で大切なもの」を得るチャンスもやってこない。Yさんはそれを涼しい顔で実現していた。
DATA
神奈川県鎌倉市Y邸
敷地面積/305.49㎡(92.57坪)
延床面積/115.09㎡(34.88坪)
1階/67.07㎡(20.32坪)
2階/48.02㎡ (14.55坪)
構造/木造(在来工法)2階建 2LDK