海と田舎暮らしが実感できる素晴らしい環境で、毎年のように移住の人気ランキングの上位に上がるいすみ市。そして「ISUMI(いすみ)」のもう一つのキーワードが「古民家暮らし」です。太く大きな梁や土壁など、代々長く住み続けてきた建物には日本の貴重なステータスがあります。古民家をリノベーションして再生する、日本人の夢とリアルが共存しています。
東日本の大震災を体験した人びとにとって自然災害に備える準備と心構えは必須ですが、千葉県の都市部にお住まいのM様ご夫婦も、地震や凶暴化する自然災害に備えて2拠点生活を計画しました。また、ご主人は幼い頃から自然との触れ合いを大切にされていたこともあり、野菜や果物をつくったり、「土いじり」もできる「ISUMI(いすみ)」への関心が深まっていました。
ほどなく大きな敷地に母屋、納屋などの古い建物が残り、広い畑や田んぼもある不動産を取得。その皮切りに納屋として使われていた建物を再生、リノベーションすることに。この建物は当初は倉庫として予定していましたが、しだいにシャワーやキッチンも必要だろうとミニマムな住宅設備も導入しました。2拠点生活の場として暮らすこともできます。
建物の再生を手掛けたのは古民家再生や高性能新築住宅を中心に、いすみ市で50年近く大工を生業とする「トコロ建業」。躯体だけを残し、土台を補強し、傾きを直し、木と木を手作業で繋ぐのは熟練の職人、自社の大工さんたちです。ほぼ3人がかりで3ヶ月にわたって再生を達成しました。
近年日本の「MOTTAINAI(もったいない)」という言葉が広く世界で知られているように、古いものを直して長く使うことは世界的にスタンダードな考え方で、日本の「古民家再生」は世界的にも大いに注目されています。
「古民家のような昔の建物は多くの手間や時間を費やした貴重なものです。どんなに古いものでも私たちがかならず蘇らせます」と代表の處雅博氏は胸を張ります。
住まいを全く新しくするのではなく、昔ながらの趣を残しながらその住まいの価値や歴史を大切に受け継ぎつつ、技術や性能を加えて快適に暮らす。古民家再生ファンは増加するいっぽうです。
<取材協力>有限会社トコロ建業