川崎市宮前区、閑静な住宅街に忽然と現れる下屋のある家。南を開放しこじんまりとした庭を伴って、端正なファサードにクラシックなシェビーバンもよく似合っています。家づくりには一家言を持っている施主がたどった長い家づくりの8年間。たどり着いたのは『KIBARIの家』でした。
KIBARIの家との出会いとは?
(施主M様)8年越しの家づくりでした。上の子が生まれる前後から家のことも考えなければと思っていましたが、車(シェビーバン)も大きいのと私が長野出身なので当初から戸建て住宅を考えていました。
27歳の頃で、まだ家に対する価格帯などの認識もなく、埼玉県でいいなあと思う工務店がありおおよその予算も伺っていました。ただ土地探しは自力でやらなければと思い、この周辺をぐるぐる回って探していました。(奥さまの)実家が近くたどり着いたのがこの場所でした。ようやく土地も見つかり、実際に家の打ち合わせを始めたところ、コロナの影響で建築費が高騰していて、当初考えていた予算では自分たちの希望する家は建てられないことがわかり、途方に暮れ、もう土地を売ろうかというまでになっていました。
悩んでいてもなにも進まないので川崎市内から湘南方面まで必死になって工務店を探しました。住宅展示場にも行きました。話を聞かせてくださいと言って見積もりまで出してもらったこところもありました。
工務店選びの条件として一番大事だったのは私たちのイメージを実現してくれるかどうかです。それに家具などの造作もたくさん考えていたので大工さんの技術も大事な選択肢の一つでした。
2023年春ころSNSでバウムスタンフさんのつくった家をみておしゃれだなと思いたまプラーザの事務所に伺いました。おふたりと話をしていて、家づくりを諦めかけていたわたしたちの熱量をしっかり受け止めていただいた気がして、一緒にやったら実現しそうだなと思いました。
家に戻って「おふたりの話は面白かったよね。家づくりに対する熱量を持っているね」と話したのを覚えています。
わたしたちは家づくりにはこだわりがあったので、色々な話をしながら素人考えではダメなところを指摘いただいたり別案を出してもらったり、とにかく一緒になって考えながら家を建てていきたいと考えていました。
おふたりとはそんな家づくりができそうだなと思いましたが、KIBARIの家=外壁全面に木を貼るというイメージだったので、私たちの考えている雰囲気とは違うかもと思って悩んでいました。その考えが一転したのは洋光台で建てられたお家のオープンハウスを見学したことでした。その家は外壁には木をほとんど貼らずに家の中でふんだんに木を使っているお家でした。担当の当山さん曰く、このお家は『裏地のKIBARIの家』との事で、こんなこともできるのかと、あの家でイメージがまったく変わりました。あの家を見ていなかったらKIBARIでの家づくりを諦めていたかもしれないと思っています。
(KIBARI)なるほど、ここまでの道のりはかなり大変だったんですね。
わたしたちはインテリア関係の学校の頃に出会っていて家づくりにはこだわりがありました。実際にはじまるとあれをやりたいこれをやりたいとうるさかったと思いますが、それでも快く向き合っていただきました。
(KIBARI)打ち合せも毎回7〜8時間コースでしたしね。(笑) M様はやりたいことがとても明確でした。わたしがハウスメーカーにいた頃は「家は売るもの」と捉えていましたが、建築家と家づくりを始めてからは「家はつくるもの」だと思っています。KIBARIの家では設計士との打合せにも踏み込んで参加することにとても満足しています。お施主さんとチームになって二人三脚で家づくりをする、これがKIBARIの家の原点です。M様のお話をお聞きしていて上から目線でなく、「おふたりの夢を実現して差し上げたい」と強く感じました。お話を伺い、設計は洋光台の家を担当したM氏ではなくY氏がいいだろうと思いました。
その選択は素晴らしかったし、それにチームで進めるというのも良かったです。私たちがお金を払う立場とかでなく「いいものをみんなでつくろう」という考えにとても共感できました。
(KIBARI)「お任せします」というのが一番困ります。施主様と一緒に汗をかいていきたい。やりたいことを実現するには予算が上がるけど優先順位をつけてコストをまとめていく。そういうことを経て家はできていきますから満足度が高いんだと思います。私の仕事は預かった予算の中で全体のコストを調整して、いかにベストなパフォーマンを出すかだと思っています。
そういう工務店は少ないですよね。それを実現するためにはどうしたらいいかと設計や予算組のところもお力添えが必要だと思います。そいう意味でも強いサポーターだったしいい選択だったと思っています。
(編集部)具体的にはどんなご要望があったのですか
視覚的にも温かみが感じられることでした。結局、木の割合は多いですね。主人が長野の出身だから信州カラマツにも縁があるのかなとも思いました。木を使うことで未来に資源を受け継いでいくというコンセプトも素敵だなと思います。車もそうですけれど古いものが好きなので、外壁の木も経年変化してかっこよくなっていくことも楽しみです。
(KIBARI)日当たりのいいこの土地をどう生かすかということに注力しました。設計は十分にヒヤリングして、総2階(キューブ型)のリビング2階案と下屋(2階部分がない1階部)がついた1階リビング案を提出しました。予算調整が必要でしたが、下屋の案を受け入れていただきました。
結果とてもいい形ですごく良かったです。
(KIBARI)通常KIBARIは使う材料をほぼ決めていますが、このお家はとてもチャレンジングな家でした。設計者も挑戦することが好きでそれも良かったと思います。ウッドロングエコという外壁塗装や建具はシンプソンのドア、アンダーセンのサッシなど新しいものを採用しています。
サンプルで一部屋できるんじゃないかなと思うくらい用意してもらって(笑)
大工さんも造作モリモリだねって笑っていました。
(KIBARI)今回のプロジェクトはKIBARIの新境地が開けそうだったので、とことんやろうと話していました。毎回8時間打合せをしても心地よい疲れがありました。
家づくりを振り返ってみると打合せをしている時が一番楽しかったですね。終わってしまったらロス感がすごかった(笑) 家に対して意見をぶつけ合い少しづつ形になっていくのが本当に楽しかったですね。注文住宅最高! って本当に思いましたよ。住んでいても毎日そう思っています。
わたしたちは自力で土地探しをしたので時間がかかってしまったけど、もっと早くKIBARIに出会っていれば土地探しからお願いしていたと思います。
(KIBARI)僕らはデザイナーズの注文住宅をつくっていると思っていますが、KIBARIの家づくりは楽しかったですか?
楽しかったですよ! 家は3度建てないと満足できないというけれど1軒で十分です! なにも後悔することはありません。このチームで家をつくれたこと、寄り添って携わっていただいた皆さんに日々感謝です。すべてに思い出があります。ありがとうございました。
KIBARIの家
DATA
神奈川県川崎市宮前区M様邸
敷地面積/204.28㎡(61.79坪)
延べ床面積/114.68㎡(34.75坪)
企画・設計/(株)KIBARIの家