“海まで歩いていける、そんな暮らしがしたかった”
若い20代でも葉山の海のそばで家を建てることはできる。が、現実的には難しい課題でもある。それでも海への憧れ、家づくりへの熱意、土地との巡り合せ、設計士とのコミュニケーション、住宅会社の応援、いろんな要素がプラスに働けば「海と人生を楽しむ家」はできあがる。
ご夫妻はともにまだ20歳代。学生時代にライフセービングの部活で出会った。
辻堂と逗子で育ったふたりにとって「海」はずっと共感してきた賜物だ。
数年前に結婚してからも海の近くで、賃貸物件で過ごしてきた。
ご主人は船の機関士で、生活の中心には「海」がある。そんなふたりには学生時代の出会いもあり「海まで歩いて行けるところに住みたい」と考えるのはごく自然なことだった。
しかし、東京で勤務する奥様は「元々葉山への憧れがあったのですが、駅から遠く、バスと電車通勤となることが心配でした。そんなときに葉山の1軒家をお借りできる機会があり、意外と通えるなと感じ、葉山への気持ちが強まりました」と話す。
だが、土地価格はけっして安くはない。海に近ければなおさらだ。
そんな状況下で土地探しは進んだ。やっと見つかった土地は、道路側の間口が5メートルで奥に行くにつれ「への字」に曲がっているなかなか悩ましい形だった。
設計は葉山の住宅会社「スターホーム」の女性設計士。「私のご要望を次々と実現していただきました」と話す。玄関は広く、寝室はこじんまりとベッドだけの最小限にとどめて、他の空間に余裕を持たせた。暮らし方や生活のアイデアが明確だったことで、個性的で暮らしやすい設計ができあがったのかもしれない。
「家の中にぜったいに砂を持ち込みたくない」という奥様のこだわり。
海からお風呂までの動線、1階で洗濯をして、干して、しまえるスペースは主婦の生活動線を楽にしている。
「4回も引越しして家の良し悪しをいろいろと体験してきた」から、家全体を生活スタイルに合わせて上手に活用できたのだろう。
一度はあきらめた屋上のサンデッキは設計の終わりになって「やっぱり作ってください」と復活。いまでは「ご飯を食べたり日焼けしたり」と大いに活用している。
ガレージはリビングに劣らずこの家の主役かもしれない。愛車はもちろん、自転車やウエットスーツ、パドルなどの海の遊び道具がいっぱい詰め込んである。海のそばで暮らすことの楽しさが溢れ、海が好きな人には垂涎の空間なんだろう。
機関士として長い航海に出るご主人には長い休暇もある。海からあがって葉山で暮らす期間はサーフィンやSUPなどを楽しんでいて、ほとんど毎日海で過ごす。機能的な室内設計やアイデアは満点として、外壁や玄関ドア、タイルなどにカラフルな色彩を採用してさらにポイントがアップする楽しいお家だ。
海のある暮らしを楽しむための家づくり。言葉にすれば簡単だけど、それを実現したふたりはまだ若いけれど海を楽しむ天才だ。そう、この家は、「海と人生を楽しむすごい家」だったのだ。 (リポート:藤原靖久)
<取材協力>
スターホーム 株式会社
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口1431-1