大量生産されるピカピカの住宅設備を多用したローコスト住宅の寿命は短くもはかない。いっぽう初期コストは高くても、天然の良質な材料を使った住宅は、丁寧に愛情を注ぎながら暮らすことで経年の美しさを増していく。本来日本人が持っていた「もったいない」というサスティナブル精神は、リノベーションという手法で具現化されていきます。
リノベーション住宅DATA
所在地/神奈川県藤沢市
リノベーション面積/約132㎡
施工金額/約2,000万円
間取り/5LDK+1DK 築年数/45年 工期/4ヶ月
設計・施工/無添加住宅 株式会社ライブハウス
外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板
外壁/漆喰+天然石
内部仕上げ
床材/1F 無垢材 ロシアンパイン
2F 無垢材 ロシアンパイン
壁/漆喰+天然石
天井/漆喰
■BUILDER’S NOTE(ビルダーズノート)
思い出深い築45年のご主人のご実家を、同居を機会に2世帯住宅にリノベーション。 ご親戚の設計された思い入れのあるお家。 そのレトロな雰囲気を壊さないように、既存部分をできるだけ残し、新規工事部分と既存部分を融合させるデザインを行いました。また、断熱材の追加や水まわりの住設機器を全て新しくし、既存のサッシをLow-Eペアガラス(複層高断熱ガラス)に変えることで快適さも兼ね備えています。
本件の住宅はご主人の実家、当時で築45年という年月が経過した住まいでした。ご親戚の建築家が精魂込めて設計したものだそうで、昭和の高度成長期当時としては、ファッショナブルで堅牢な建築物だったということはすぐに理解できます。
ここは東京のハブとなる大船と江ノ島を継ぐ湘南モノレールが走る高台の住宅街。昭和の高級サラリーマンが成功の証として住宅を取得したエリアだからひと区画の敷地面積も大きく、いまでも立派な構えの住宅が並んでいます。
しかし時は流れ、子供世帯は東京に移り住むようになり、世代交代も少しずつ進みます。高齢化も進みクルマが生活の必需品となりました。ところがアフターコロナの移住ブームもあって、ふたたび急激に人気が集中している住宅地でもあります。
O様邸のリノベーションは4年前のお母様と同居がきっかけでした。木の板張りのいかにも注文住宅の趣がある住まいを、二世帯住宅にどんなに変化させていくか。建て直しかリノベーションか。
多くの施工会社がいくつかの問題点を指摘するたびに計画は頓挫を繰り返して3年ほど苦心していた頃、無添加住宅がリノベーション住宅展示場で目に入り、大きな特長である自然素材はもとより、リノベーションにかける熱い思いがO様を即決断に導いたそうです。
ご家族はアメリカをはじめインドネシア、香港など世界各地で駐在を経験しているためか、家具をはじめ、暮らし方に海外のセンスを感じます。海外で暮らした経験者の多くが、いいものを長く使うという習慣を体で覚えて帰国されるケースはよく目にするもの。
ポーランド製の家具、中国製のアンティークな置物。どれもがご家族が過ごした土地の思い出をはらんでいるのでしょう。
リノベーションの細部については、ウエブでじっくりとご覧いただくことにして、大きな改修点はサッシ交換でLow-Eペアガラス(複層高断熱ガラス)への入替、外壁や内装の壁の漆喰施工、追加の家具製作など、大切なものは保存し、二世帯住宅としての機能性を大幅に改善するリノベーションになりました。
「植物や古い家具が好きで、間接照明のもと、漆喰の壁に囲まれた空間がすごく落ち着きます」と話します。
神奈川の海沿いの街には、大きく素敵な住宅が今なお多く残ります。大磯の高台や鎌倉や葉山の古民家、三浦の高台など、建替えるにはもったいない住まいがたくさん現存しています。
良いものは丁寧に手を入れて長く使う、そんなサスティナブルな暮らしかたこそがかっこいい。関心を高めている若い世代は確実に増えていくことでしょう。
神奈川県藤沢市O様邸
取材・文◎ワイズクリエイティブオフィス 撮影◎Cocoon