建築家が自然素材で実現したリノベーション
<建築家・木名瀬佳世>
撮影◎山王こず恵
取材協力◎木名瀬佳世建築研究室
マンションの木質化、あるは自然素材を採用したリノベーションが活気付いている。横浜市の中心街にある築年数30年ほどの中古マンションを購入した建築家、木名瀬佳世さん。自身でプランが描けることもあって「中古マンションで自由に暮らしやすく、思い通りにリノベーションするのもきっと楽しいのでは」と組合からリノベーションの許可を得やすいマンションを探し出した。もちろん木や自然素材を採用することは当初からの基本計画であった。
改修前は、マンションによく見られる同じプランが繰り返される配置で、リビングは南側、見晴らしの良い北側には個室があり、バルコニーはほとんど使われない空間になっていた。どの部屋も突き当たりばかりで風が通らない。
そこで突き当たりの部屋をなくし、部屋と部屋が緩やかに連続することで広く見えるように計画。思い切ってLDKと個室の位置を逆転させ、キッチンの位置を北側のバルコニー側に移した。北側の窓からはルーフガーデンとみなとみらいの景色、西側の窓からは天気の良い日には富士山を望むことができた。
❶サッシの高さに合わせたベンチを設置した。プロポーションが綺麗
❷リビングの床はナラ材を採用。梁からの間接照明が美しい
❸2種類の大きさの冊子があったために障子で趣を変えた。障子は断熱性能にも優れた建具である
❹洗面室には柔らかい印象のパインを用いた
❺掛け軸をかけるために、奥行きのない織部床を置いた
❻事務所も兼ねることから生活感を遮断するパーテーションを設置。微妙な高さに苦慮したそうだが、子供も喜んで使っている様子
❼無垢材と自然素材で完成したリノベーション。夢の戸建て感覚が実現した
ナラやパインなどの無垢材はもちろん、帆立貝の殻を粉砕したチャクウオールや和紙などの自然素材もふんだんに使用している。どこにいても風と光を感じられる。猛暑の夏もエアコンいらずで過ごせているそうだ。新築マンションは素晴らしく機能的で美しいものだが、一方でリノベーションがしやすい中古マンションを購入して、自然素材を使って思い通りのリノベーションを計画する、満足度の高い住まい計画ですね。
建築家/木名瀬佳世さん
茨城県出身、京都府立大学住環境科学専攻修了 2013年一級建築士事務所 木名瀬佳世建築研究室設立(横浜市中区石川町)
http://www.kkal.jp/