秋から冬にかけて乾いた空気に入れ替わるころ、東から太陽が昇りかける湘南海岸の朝の海は、キラキラと眩い光を反射する。それも想像以上に強いものだ。鎌倉の海を見下ろす丘の上、海を眺める週末住宅。極上の食材を目の前にしたシェフが呟くように、「さて、どのようにクックいたしましょうか」。
白い漆喰をまとった外壁に比べるとその扉は比較的小さく、ただその色彩だけが存在をアピールしてくる。個性的な家が立ち並ぶ周辺環境の中でも、そのファサードが、誰もを驚かす1発目の衝撃だ。
まるでラビリンスにでも吸い込まれるような、異次元の扉を開くとそこは大きなロビーになっていて、素敵なアンテーク家具が色合いといい質感といい、空気感に寄り添うように置かれている。まあ、ここまでは想像通りだけど、重そうなアンテークの2枚扉を開くと、その先には切り取られたような水平線が目に入る。2発目のショックが走る。
箸休めにバスルームを覗くと、船室のような丸い窓からも同じ海が見えた。十分すぎる遊ごころ。
広い階段を上がる。あんまり光が眩しくて引かれたのだろう、レースのカーテンがサッシの隙間から吹く風で少し揺れている。ラギッドな仕上がりの無垢材やタイル、漆喰、テラコッタなどのナチュラルな素材が、アンテークの家具を違和感なく受け入れたリビング空間。アーチ型の天井に向こうは大きなキッチン。3度目のショック。
4回目の衝撃はカーテンを開いた瞬間に広がる水平線と大きなインフィニティ・ウッドデッキ。おそらく僕らがいるこの瞬間は、1年でも有数のコンディションの朝だろう。波もある。乾いた空気と暖かい風。湿度の高い東アジアの片隅にもこんなに素晴らしい1日があるのだ。
そんな貴重な週末を提供するために、この家はある。
4発とはいわず、5発でも6発でもいい。その刺激は大きく、ここを訪れたあなたはきっと天国へ向かう。
神奈川県 七里ガ浜S邸
敷地面積/263.85㎡(79.81坪)
延床面積/182.38㎡(55.16坪)
1階/101.23㎡ (30.62坪)
2階/81.15㎡ (24.54坪)
用途地域/第一種低層住居専用地域
構造/木造2階建て
間取り/2SLDK+Deck26帖
MATERIAL
外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板葺き
外壁/ラスモルタル下地弾性セラミックシリコン鏝塗仕上げ
内部仕上げ
床材/1Fヨーロピアンオーク無垢材18㍉・天然石等
2F天然石等・ヨーロピアンオーク無垢材18㍉・イペ30㍉
壁/漆喰鏝塗り仕上げ
天井/漆喰鏝塗り仕上げ