よどみのない端正な顔つきの持ち主は好感の持てる人物であるけれど、住まいにおいてもそれは同様かもしれない。
N邸のこの端正なファサードはおそらく家そのものと、周囲をとりまく庭とのバランスの良いハーモニーから作り出されるものだろう。
沖縄が大好きで頻繁に通うご夫婦は、サンゴの環礁をイメージしてエントランスを構成した。
きれいに手入れされた芝生の一角には、シンボルツリーとして大きなやまぼうしを置いた。
木の外壁をまとった家を置き去りにすることなく、まるで寄りそうパートナーのように庭がその役割を果たしている。
キリガヤといえば、逗子のみならず湘南一帯での代表的なプレステージを持つホームビルダーだが、
またそれは湘南の気候風土を知り尽くしているという意味でもこの地域で圧倒的である。
ところでNさんが、この住まいをつくるにあたって事前に整理して
書き込んだ内容が残されている(家づくりノート)を拝見させていただいた。
その一部を挙げてみると、
◎ 基本コンセプト=シンプルであること。
◎ 〜風はだめ、本物であること。
◎ できるだけ太陽の光と風を利用して快適暮らしたい。
◎ 生活の中心はリビングに。
◎ ランニングコストが安いこと。
などなど。
まさにこれは「湘南の暮らし」の条件そのもの。
施主とビルダーとの相性の良さは、数社が競うことになったプランを勝ち抜いたことが証明した。
勝因はその営業熱意もさることながら、Nさんが求めた「湘南の暮らし」を120%実現できそうだったことが決め手になった。
振り返れば、シンプルに木が好きだった施主とは相思相愛の関係だったのだ。
さて、生活の中心をリビングと定めたN邸は寝室などの居室は決して大きくはなく、
収納の多さと納戸を設けることに貢献している。
そしてなんといっても昼間も楽しく過ごしたいという希望を叶えたのは
くだんの庭と一帯となれる縁側のようなデッキだろう。
ここに腰をかければ、過ぎていく時間を忘れる。
「家と庭があってこそ家庭になる」とは、よく言ったものである。
N邸を少し離れて眺めてみる。
するとこの住まいがいかにこの街にとけ込んでいるかがよくわかる。
住まいは街と一体になってこそ、美しい。