夏の避暑地として理想的な元箱根。芦ノ湖を望むその素晴らしい景観を最大限に引き出すため、設計が望んだのはSE構法による大きな室内空間と高低差がまるで宙に浮いているかのようにみえるピロティのある特別感のある建物でした。
【標高825mの土地】
この土地は芦ノ湖を望む緩やかな斜面に位置し、気温が1年を通じて安定して涼しいのが特徴です。とくに真夏でも28℃を超える日はほとんどなく、芦ノ湖からの風が吹くと一層快適な環境です。
【始まりはお客様からの「テニスコートにトイレが欲しい」というシンプルなご要望】
敷地を訪れたとき、目の前に広がる 芦ノ湖と箱根山の外輪山 の絶景に心を奪われ、この魅力を存分に生かした「絶景を楽しみながら、テニス観戦もできる別荘」を建てるというアイデアが生まれました。
【SE構法による開放的なピロティ空間】
敷地内にあるテニスコートには、プレイ中の休憩や雨宿りができるスペースが求められました。そこで採用したのが SE構法です。この構法を採用することで、耐力壁がなくても広々としたピロティ空間を実現し、テニス観戦や憩いの場として活用できる、開放的な設計を可能にしました。
【湿気への挑戦】
元箱根の建築には地域特有の大きな課題があります。それは季節によっては雲の中で生活しているかのような湿気の多さです。地元の建築関係者に聞くと多湿な気候により外壁の通気層が十分に機能せず、壁体内に湿気が溜まり続けることで構造用合板が腐食するという不具合が起こると言います。とくに北側の外壁や窓周りでは、一般的な通気層では空気が十分に流れないことが判明しました。
【ファサードラタン〜景観と機能を両立する外壁】
この湿気問題を解決するために採用したのが 「ファサードラタン(スノコ壁)」 です。 板張りの外壁にスノコ状の隙間を設けることで夏の日射を遮りつつ、湿気を滞留させず外に逃がす効果を狙っています。地元産のスギ材を使用することで、以下のメリットを実現しました。
特有の環境に適応した地元木材の耐久性を活かすこと。 自然豊かな景観に調和するデザイン。 地場産業を活用し加工から輸送まで一貫して行うことで輸送距離を短縮。 さらに、この循環型プロセスと建築物のメンテナンスを通じて地元森林の持続的な管理にも貢献しています。
【絶景と快適性の融合】
この別荘は単なる「避暑地」ではなく、四季折々の自然を楽しみ、地域の資源を活かしながら快適に過ごせる場所を目指しています。 芦ノ湖を見渡す絶景、テニスを楽しむ開放感、そして湿気対策や地産地消にこだわった環境への配慮。この別荘は自然と共生しながら心からリラックスできる空間となっています。
<住宅データ>
ビルディングタイプ/別荘
施工/株式会社キリガヤ
構造/木造2階建SE構法
延床面積/152.32㎡
設計・施工/株式会社キリガヤ
構造設計/株式会社NCN
外構/株式会社キリガヤ・ガーデン事業