鎌倉市・F様邸
おふたりがそれぞれITや人材関係の経営者でもあるご夫婦にとって、都内で暮らすことが必須でなくなり、三軒茶屋の戸建ても手狭に感じるようになったことが移住を決断したきっかけだった。
せっかく東京を離れるなら、静かで文化の香りがする逗子、葉山、鎌倉がご希望だったそうで、土地探しは自らネットでコツコツと検索をはじめた。1年かけて検討した数はおよそ100件以上、現場にも何度も出向いて「とにかくたくさん歩きましたね」と振り返っていただいた。
F邸は、鎌倉・小町の細く長い坂道を極める手前にある。東京都心からはじめて移住を経験されたご家族にしては、なかなかマニアックなエリアを選ばれたものだというのが率直な感想だった。
北斜面に建つ肩流れの瀟洒な外観からは、大袈裟にいえば住まい手の気持ちの強さ、前向きな「圧」のようなものを感じてしまう。アプローチをあがりエントランスの扉を開けると中庭が目に飛び込み、来訪者に大きな期待感を抱かせくれる。
エクステエリアで多少おどかされ、インテリアは施主のセンスで素敵にまとめられている。
鎌倉での家づくりには、崖や斜面、津波などの自然環境、埋蔵物、レッドゾーンなどの知識が必要だが、残念ながら東京の住宅会社に限界を感じ取ったという。地元湘南の建築会社に依頼することを決め、スターホームとの出会いが家づくりの第2ステップとなるのだった。
1階は中庭を囲むようにご主人のオフィス、バスルーム、主寝室などで構成されている。都会的な暮らしのセンスと設計の絶妙なバランスが素晴らしい。そしていよいよクライマックスの2階リビングだ。
この土地は大きな谷戸になっており、この家が建つ北斜面からは鶴岡八幡宮の屋根や鎌倉の中心地を見下ろすことができる。建物を南側に開放するというセオリーに反して北側の光景を得るための設計は、この家の価値を極限まで高めている。永遠に失うことのない資産価値だ。
「家づくりはスターホームさんとの二人三脚でした。土地探しに1年。建物に1年かかりましたが、この家に後悔はまったくありません」
ご主人はこの家に住みはじめてからは、もっぱら植物を育てることを楽しんでいる。
「この風景を眺めながら生活の豊かさとしあわせを感じています。毎日のように山や海へ散歩に出かけます。仕事に身が入らないというのは冗談ですが、かえって集中力が出るのかもしれません」と奥様が笑う。
伝統のある鎌倉は移住者にはハードルが高そうだが「ご近所の方も優しいし、子供も新しい学校の環境にもすぐに慣れ楽しんでいますよ」と話す。
移住が成功か否かは「決断力」にかかっているのだと思う。土地探しに情熱をかけ、家づくりにすこしも妥協しなかったF様ご家族にとってこの住まいは宝物だ。初めての移住はこうして大成功を収めたのである。
<取材協力>
取材|ワイズクリエイティブオフィス
住宅撮影|東涌宏和、ワイズクリエイティブオフィス
取材協力:スターホーム(株)
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口1431−1
TEL: 045-232-4370