たとえばタイル貼りや壁塗りなど家づくりで、どこかの工程で施主が参加するのがセミ・セルフビルド。施主と作り手でありホームビルダーの息の合った会話をご紹介しましょう。
取材協力:有限会社ホームスィートホームメイド
施主:川上大祐さん × ビルダー:石川秀一郎さん
川上 ホームスィートさんにお願いしたのは、石川さんのご自宅に伺った時に、家のテイストも好きでしたし、セミセルフビルドができるということが決定的でした。
石川 弊社では参加できる工程作業はぜひ参加していただきたいという方針です。私自身が昔から物作りが好きなのですが、一生に一度くらいの楽しい家づくりだからこそ、人まかせにしないで是非参加して欲しいと始めました。最初の1棟目からそうでした。人によってはタイルを1枚貼ることから、壁を塗ったりしていただいています。川上さんのように建前や床はりから参加するのは珍しいです(笑)。これまでに9割程度の施主様がこのセミセルフビルドに参加されています。
川上 私は仕事の美術工芸と同じように物作りが好きですし、家は自分で住むところで、寝るところであり、食事をするところ。自分の「巣」ですからそれを人任せにするのもなんだかなあ、という気持ちでおりました。住んでからもメンテナンスをするにもどこがどうなっているか構造を知っておかないといけませんから。セルフで入ったことで、僕は大工さんをはじめこの家に携わった方は全て顔がわかります。もちろん大工さんとはお昼ご飯も一緒に食べてきましたし、明日は何時頃に来てこれとこれをやってくださいとか、タイル屋さんがタイルを貼る横で僕が建具のルーバーを作っていたり、みんなで作っていることはとても楽しかったです。家づくりは物作りの究極だと思います。一歩踏み出せないけど、やりたいなって思っている人はかなりいると思います。
石川 本来4ヶ月でできるところが半年くらいかかることも多いですが、職人さんもそんな現場でやるのはとても楽しいと言っていますよ。このセミセルフビルドは「木の家」だからこそ生まれるアクションだと思います。
川上 たしかに木は触っていて気持ちいいですよね。この床は杉ですが、搬入されてから切っていくときに広がるあの香りは作っている時にしか味わえないものでした。お風呂やデッキはレッドシダーを使っていますが、それはまた匂いが違います。木の良さを感じるのは、人間のDNAのどこかにあるのかもしれないですね。木の家は出来合いのものではなく、経年の変化を楽しめる愛着の持てるものです。五感で楽しむものかもしれません。
石川 自然素材だからこそ、すぐに人に馴染むのです。木には癒しとか安心感があります。陶芸家は器を育てると言いますが、使い込めば使い込むほど味わいが出る、そういうものです。家も生活することによってその家の味わいが出てくるのだと思います。多少の不便さも楽しんでしまう、そこに生活の楽しさがあるのだと思います。
<施主:川上大祐さん>
施主で自邸の家づくりに積極的に参加した経験を持つ。撮影や展示会、イベントなどの美術を担当する大工。DIYアドバイザーでもある。現在41歳。趣味はサーフィンなど。ご家族は奥様とお子様の3人
<ホームビルダー:石川秀一郎さん>
茅ヶ崎海岸から1分のホームビルダー「ホームスィートホームメイド」代表取締役社長。家具作りや大工の修行などをへて茅ヶ崎に雑貨屋をオープン。人の生活に近い物作りや家づくりを専業として25年。最初の1棟目から施主にセミセルフビルドを推奨している。